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2011年1月12日 (水)

罪と罰第4部(14)

40 Я, знаете, человек холостой, этак несветский и неизвестный, и к тому же законченный человек, закоченелый человек-с, в семя пошел и

じつは、わたし、独身でしてね、社交界とのつきあいもないし、名前も知られていません、おまけにもうできあがった人間、こちこちに固まった人間、しがない種馬みたいなもんでして・・・・・・・(亀山訳347ページ)

「しがない種馬」、みなさんはどう思われる? え、感じが出てる? 自分は終わってしまって・・・が・・・が・・・これ、子だくさんのほか能のないお父さんが言うならいいかもしれないけど、独身だってんだからねえ。意味は正確にとらえてらっしゃるんでしょうが、あいにく種馬ってのが「しがない」かどうか・・去年の口蹄疫で明らかになったように、種牛の価値は、普通の牛と比べもんにならない。種馬もそうでしょ。みんながディープインパクトじゃないにしても、エリート中のエリート中のエリート。ターフで雄姿を見ることはないにしても、しがないとは言わない。もっとも、しがない、がついてるから意味が通るんだが・・・さて、семяはなるほど、種ですが。в семя пошел 、ほかの方はどう訳してるかな?

中村訳: 種になりかかっている人間です
工藤訳: もうぬけがらになりかけています
江川訳: 正札つきの小役人なんですな
亀山訳: しがない種馬みたいなもんでして

中村さんはそのまんま。工藤さんは意訳。江川さんは全くの創作。亀山さんはミスマッチ・・・辞書にはどう書いてあるかというと(пойти в семенаと書いてあるけど)、要するに、盛りを過ぎ、成長を止めることらしい。日本語で言うと、花の盛りを過ぎましたってところですか。

41 芸術かトリックか

この予審判事の仕事っていうのは、まあ言ってみれば、一種の、自由なトリックといおうか、それに類したもんでしてね・・・・・・(亀山訳351ページ)

「自由なトリック」のところ(свободное художество)、たとえば、江川さんは「自由な芸術」と訳している。どちらの意味もあるのでなんとも言えません。ただ、「トリック」のхудожествоはあまりいい意味では使わなそう。

42 Уж эти (некоторые, конечно) глубокомысленно-психологические приемы-то наши крайне смешны-с, да, пожалуй, и бесполезны-с, в случае если формой-то очень стеснены-с. Да-с... опять-таки я про форму:

われわれの用いる、この心理学的とかいう大まじめな手法なんて(むろんぜんぶじゃないですよ)、じつに滑稽きまわりないもんなんですよ、そう、この形式ってのがあんまり表に出すぎたりすると、それこそ、役立たずってことになりかねませんでね。おやおや・・・・・・また形式のことなんかを言いだしているみたいだ。(亀山訳352ページ)

глубокомысленно-психологические は前が後ろを修飾しているのだから、心理学的とかいう大まじめな手法ではなく、真面目に心理学を用いる手法かな。それから、この文章、何が役立たずになるのかわかりにくい。「手法」だって、わかる? 「・・・滑稽きわまりないものだし、その上、あまり形式に縛られたりすると役に立たないてことになりかねない」でわかるかなあ。

それより問題は「おやおや」以下。まるで、気がつけば形式の話じゃないですか、みたいですが・・・ハナから形式の話をしてるわけだし、それによくごらんくださいませませ:формуの後ろはコロンでっせ。これからまたまた形式の話をしまっせ、という印でござんしょう。おやおや、みたいだなんて、知らないふりをしちゃって、分裂気味。

43 И не силу же он свою мне бесполезно выказывает и... подсказывает: он гораздо умнее для этого!

《けっこうな講義じゃないか(中略)それに、自分の力を意味もなく誇示し・・・・・・あてこすってやろうってのでもない。やつははるかに利口な男だから、そんな手は使わない!(亀山訳359ページ)

ポルフィ-リーの長広舌についてラスコーリニコフが言ってるのですが。подсказываетは、セリフを忘れた俳優にそっと教えてやったり、あるいは、誰かに何かのアイデアを与えたり。言葉は悪いかもしれないけど、知恵をつけるって感じかな。穏当に訳すなら「ヒントを与える」とか。あてこするという意味はなさそう。従って、それは「「手」ではない。「やつは」以下、「そんなことをするようなばかとはわけが違う」とか。

少し後にもподсказыватьはあって、「なんのために、ここまでおれに手のうちを明かす」と訳されている。これも意訳だがまあいいでしょう。

44 そりゃあまあ、小説の山場ではありましょうが

ところが男は、そこでばたんきゅう! そう、ここぞという山場、いちばんスキャンダラスな場所で気絶し、ぶっ倒れちまう。たしかに、病気のせいもある、部屋のなかはときとして息苦しいこともある、でも、それにしたって!(亀山訳363ページ)

もちろん、これはラスコーリニコフが警察署で倒れたことをあてこすっている。そうすると・・・в самом-то интересном, в самом скандалезнейшем месте。後半の「 スキャンダラスな場所」はいい。が、あれが「ここぞという山場」かというと、??? だって帰ろうとしたときに事件の話が聞こえてきただけだもん。интересномは興味を引く、好奇心をそそる。この場合は、おもしろい場面という意味じゃなく、もっとも注目を浴びやすい場所という意味じゃろう・・・江川さんも「クライマックスのいちばんの見せ場」だってさ?????

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